不登校児ママの発達相談外来

発達障害や不登校の子供たちを診療している小児科医です。わが子も発達障害&不登校で日々格闘中。

境界知能&知的障害

ぼくはレース場の持ち主だ!

最近読んだ、児童精神科の先生が書かれた本の中で、おススメされてた児童書を読んでみた



知的発達の遅れがある主人公、アンディの見ている世界とその孤独がテーマ


アンディは彼を仲間に入れてくれる幼馴染たちの存在に救われてはいるのだけど、それでもやはり仲間に入れない時がある


それは、幼馴染たちが、アンディに理解できない遊びをしている時。


児童精神科の先生の解説によると、「認知」の世界は知覚したままの「一層構造」




そして、「認識」の世界は多重の意味付けや約束からなった「多重構造」

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子供は成長とともにこの多重構造の世界を自由に行き来できるようになるけど、知的な発達の遅れがあるとこの行き来から取り残されてしまう


そこに、計算や読み書きが遅れる、など技能を超えた困難さと孤独が潜んでいる。。


この児童書を読んで、アンディ自身は言葉にできない、だけど感じているだろう孤独感、悲しみを感じて切なくなった


みんな(多数派)と同じように感じられない、みんなと同じように理解できない、みんなと同じように行動できない。。。。


そういうこともわからないくらい、知的な遅れが大きければ、本人自身はそれほど悩まないかもしれない。


でも、みんなと同じようにはできないと理解できる境界知能や軽度知的障害の子供たちは、本当に苦しいだろうな。。









目標の設定

小学校1年生の境界知能児の親御さんと話してて…





知障級で学んでいる子なのだが、勉強を嫌がり宿題をさせるのが大変なのだと

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学校で先生も手を焼き、「家でやってきてください」と宿題にされるが、嫌がってできないことが多くて、どうしたら良いのか…と相談された。


今は3学期、「1年生のワークが終わるように」頑張っているのだと


私は、学習支援を得てもなお、みんなと同じペースでワークをすることを目標にしていることに驚いた



1年生のワークを1年間で終わらせるのが難しい子だと予想されたから、知障級に入ったはずなのに…


個別で教えてもらえれば、学習進度はみんなと同じにやれるかもと期待するのかな?


こんなふうに、教育的支援の枠組みの中に入ってなお、学習目標が、「みんなと同じように」勉強することになってしまい、苦しむ親子を見てきた








でも、その目標を作るのは、実は先生だけではなくて、少し大きくなると、子供本人だったりもする


「みんなと同じようにやりたい!」と必死になる子も結構いるし、学年の進度で勉強することを望む、願う親御さんも多い


もちろん、個別に学習することで、それがさほど無理なくできる力や情緒の状態にある子は良いけれど…


先の子供のように、先生や親御さんが学年のペースで勉強することを目標にしたけど、実行するのが難しい場合は、早く、その目標は取り下げた方が良いと思う。


境界知能の子供ならば、学年相応の勉強は難しくても、大人になった時に自立できる可能性は十分ある


大人に必要な学力(小学校4年生までの読み書き、算数)を義務教育の間に身につけることができれば、進学できる高校はあるし、仕事だってちゃんとできる






目標はそこだから、勉強が嫌いになりすぎないように、短期目標は子供の力に見合ったものを設定してほしい


みんなと違うペースで勉強するのは心配かもしれないけど。。。


いずれ通常級への移行ができたら、というケースの場合、学年の学習ペースから外れることはなかなか受け入れがたいかもしれない。



でも、やっぱり、目標設定がその子に合っているのかどうか、ちゃんと見極めて頑張らせてほしいなぁ




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まお作 チョコレートマカロン

生地はちょっと焼きすぎちゃってクッキー様

クリームはちょっとやわらかくてとろけてきちゃう

まおは「うまくできなかった~」とへこんでいたけど。。

またチャレンジしてね


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反省できない

「ケーキの切れない非行少年たち」を読んで学んだこと







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それは、非行少年たちの多くが「反省できない」ということ


反省できないとはどういうこと!?




非行少年たちが反省できないのは、


・認知機能の弱さ・感情統制の弱さ・融通の利かなさ・不適切な自己評価・対人スキルの乏しさ+身体的不器用さ(これには当てはまらない子もいるから、あえて別枠)

という特徴があるから。(筆者はこれを「非行少年の特徴5点セット+1」と名付けている)


そもそも自分がしたことが「悪いこと」「反省すべきこと」なのだと、理解できないから




認知機能が弱いと、見たり聞いたり想像する力が弱い。


だから、物事を正しく、適切に捉えられない。


感情統制をできないと、認知機能も働かない。


結果として不適切な行動につながる。


融通の利かなさは、被害感につながりやすい。


いろいろな可能性を考えられず、思い込みから不適切な行動につながりやすい。


自分自身をわかっていないし、適切な対人スキルを習得できていない。




こういった特徴は、発達障害や知的障害、境界知能が背景にあることもある


発達障害、知的障害、境界知能と非行や犯罪がイコールではもちろんないけれど、適切な配慮や環境に恵まれなかった一部の子供たちが、非行や犯罪を犯すようになってしまう





だから、筆者は、非行少年たちを更生させるためには、そもそも非行少年を作らないためには、上記が向上するような、社会面・学習面・身体面の支援が必要だと言っている。


今では、少年院で認知機能トレーニング(コグトレ)を行っているそうだ




得意なこと、できてることをを見つけて褒めて伸ばす、だけではダメで、苦手なこと、できてないことをを励まして伸ばさないとならない


結局のところ、「どうやって」が大切だし、一番難しいのだろうなぁ











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毎朝のお弁当作りの定番、卵焼き


今回は塩昆布入り


私はもともとあまり器用じゃないけど…


毎日作ってると、だいぶ形を整えられるようになった


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境界知能 ②

知的な弱さに気付かれにくい境界知能の子供たち





そうは言っても、知的に平均域から高い子供たちに比べたら、昔に比べて、支援の手はずっと多く差し伸べられるようになっていると思う




近年は若年者の凶悪犯罪、非行とも総人数はもちろん、若年人口比でも顕著に減少してきているのは、その成果だと思う。





でも、非行や犯罪で少年院や刑務所に入ることになる子供たちがまだまだいるのも事実


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そうならないように、境界知能の子供たちに何が必要か?何をしてあげたらよいのか?



「ケーキの~」の筆者は、大切なのは、「自己への気付き」と「自己評価の向上」で、そのためには良いところを見つけて「褒める教育」だけでは解決しない、と書いている





「国語」や「算数」はもちろん、全ての学習の基礎となる、認知機能の向上への支援が必要だと



これは、前に話題にした「苦手を伸ばすか、得意を伸ばすか」という視点からだと、「苦手なことを伸ばす」ということなのだと思う。








認知機能は、記憶、知覚、注意、言語理解、判断・推論など要素が含まれた知的機能のこと



学習だけでなく、すべての行動の基盤になってくる。


具体的にはどうやって認知機能を向上させる?


筆者は、「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」を勧めている。




学校の教科の勉強は嫌がる子供たちでも、遊びの要素も含まれるコグトレは、楽しくできるのだとか


なるほど~


そういえば、病院で言語聴覚士や作業療法士がコグトレの教材を使っているのを見かけたなぁ。


私が知らなかっただけで、すでに結構普及されてたりするのかな。


リサーチしてみようっと





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ドルジ作 カレーと卵スープ


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境界知能 ①

ずっと気になっていて、ようやく読めた本





筆者は精神科医で、非行や犯罪で少年院や刑務所に入ることになった子供たちとの関わりから、そういう子供達を作り出さないためにはどうしたらいいのか、ということを論じていた



すごく共感できるし、新たな発見もいっぱいだった



筆者は、特に「境界知能」の子供たちへの気付きと支援の必要性を訴えている


発達障害でも、障害とするかどうかの「グレー」があるけど、知的な面からの評価でも、グレーは存在する。




IQでいうと、70未満でかつ社会生活上の不都合がある場合は「知的障害」と診断される。



そして、IQ84以下、70以上の場合は「境界知能」と呼ばれる



知的な能力が、障害と言うほど低いわけではなく、でも平均と言えるほど高くもない、という状態。



知能分布からすると、およそ人口の14%に相当するらしい



だから、1クラス35人とすると約5人が相当することになる。


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その子たちは、生活上や学習上で様々な困難を抱えやすいのに、気付かれにくく、十分な配慮や支援を得られず不適応を起こしやすい


からかいやいじめの対象にもなりやすい。



筆者は、境界知能の場合、病院で検査を受けても「知的には問題ありません、様子をみましょう」と言われていたケースが多いと述べている。




そして、学習や物事を十分にできないのは、本人の努力や経験が足りない、親の育て方が悪い…とされてしまい、親子共々苦しむことになる…

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(ちょうど先月の小児精神神経学会雑誌に、筆者の論文が載ってた。その論文の図の写真)


(続く)




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いただきものタンドリーチキンサンドとクッキー、チーズケーキに芋羊羹


カレー風味のバンズに挟んだタンドリーチキンが絶品だった


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ギャラリー
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  • 表裏一体
  • ペアレントトレーニング ⑤ ~無視は難しい ③~ 
  • 心理評価の結果説明 ~我が家の場合 ④~
  • WISC-Ⅴ ② ~新しい指標について~
  • 自分じゃないとうまくいく?
  • 迷うなら支援を ~ドルジの場合~
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  • まおの悲しみ ①