不登校児ママの発達相談外来

発達障害や不登校の子供たちを診療している小児科医です。わが子も発達障害&不登校で日々格闘中。

LD

マークシートは神!?

先日、小児科学会の地方会に参加


そこで、私にとってすごくタイムリーな発表を聞けた


それは、ADHD+LDの生徒が、合理的配慮(試験時間延長、別室受験)を得て受験し、見事高専合格を勝ち取ったという症例報告だった


ドルジの行く予定の高専ではなく、近隣の高専でのこと、そしてすでにその生徒は高専2年生になっているということもわかった


その発表を聞き、発達相談外来をする医師としても、発達障害児の母としても、すごく勇気づけられた


まず、医師が学習障害と診断し、中学校で学習支援が開始されていれば、公立高校や高専の受験では配慮が得られる可能性が十分にあるのがわかった


それから、発表されたドクターも、高専の入試形態であるマークシートを絶賛!していたように、書字障害を持つ子供たちには、マークシートの入試は本当にありがたいものだとあらためてわかった

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発表されたドクターは「社会の中で手書きの文書を書くという機会は少なくなってきているのだから、書字の正確さや速さで学力を競う必要はない。


多くの学校でマークシート方式の入試が増えれば、救われる子供たちはたくさんいるのだが」と言われ、本当にその通りだと思った


ただ、一方で…


入試である以上、限られたパイを競うという現実はかわらない


マークシートで救われる子供がいる一方、速くキレイに書字できることが武器である子供にとっては不利になるのかもしれない


結局、今苦しむ子供達が救われても、新たに苦しむ子供達が生み出されるのかなぁ…


LDドルジの母としては、「マークシートは神!」というドルジに寄り添いたいし、ドルジが合格して本当に嬉しい。


でも、その影で不合格に泣いている子供もいるという現実に切なくもなる



時間がかかるだけ

ドルジは、冬休みもちょこちょこ勉強に取り組み、苦手な英語の力もだいぶついてきた





英文法の枠組みがおおよそ理解&記憶できてからは、だいぶスムーズに問題を解けるようになってきた





ただ、学習障害ゆえの「読み書きの遅さ」は相変わらず大きな問題





時間さえかけることができたら、多くの問題を回答できるのだが、テストでは時間が全然足りない

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高専の入試はマークシートだから、書く負担は大きく減っているのだけど、読む負担が減るわけではない。


だから、過去問を解いていても、時間通りに測ってやったら、大問1つ丸々手付かずになってしまうような状態


私は、ドルジの勉強の進捗状況を聞いてきた夫に


「ドルジは頑張ってるよ。英単語もだいぶ身に着いたし、問題も解けるようになったのだけど。。。


あとは、時間との戦いだよ。どうしても、問題を読むのに時間がかかっちゃうから」と言った。


すると夫は、「そうなんだ。時間がかかるだけなら全然問題ないじゃん。


回数こなせばはやく読めるようになるよ!」と言う。


そうなんだけどね。。。。


私は、学習障害を理解してもらう難しさを痛感した


速く(普通の速さで)読む、ということが、学習障害を持つ子供たちにはどれほど難しいことなのか、なかなか伝わらない。


ちょっと練習すれば、上達する、克服できるはず、と思われてしまう。


まぁ、今ではこんなことを言ってる私だって、ドルジが学習障害だとは気が付かなかった





夫がドルジを学習障害だと言われても、ピンとこなくても当然なのかもしれないな。


ドルジ自身にも「時間がかかるだけ(で、ちゃんとできる)」とポジティブに伝わればいいのだけどな


ノートをとる意義

発達相談外来で。。。


ASD+LDの小学校高学年男児、支援級+交流級で楽しく過ごしている


低学年のころは病院で読み書きの訓練を受けていた。




今でも支援級での学習では穴埋め式のプリントを準備してもらうなどして、書く負担は少なめで勉強しているようだ。




私は、学校が良い支援をしてくれて、とても感謝していたのだが。。。。


最近の定期診察で、私はもやもやすることになった


その子はとても適応が良くなり、高学年になってからは、国語と算数だけ支援学級で勉強して、そのほかの授業は通常級でみんなと同じように受けている。




学校の様子を本人に聞くと「社会と理科が大変。テストで半分くらいしか点数取れないんだ」と言う


でも、お母さんに話を聞くと「交流級(通常級)の先生からは、『授業中頑張ってノートをとれるようになってきましたよ』と褒められました」と嬉しそう


私は、本人に「もしかして、ノートに書くの、すごく大変なんじゃない?


先生の話を聞いている余裕ある?」と聞いてみた。するとその子は


「うん。。。ノート書くの大変だから、先生が何を言ってるのかわからなくなる時あるよ」と答えた

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私は、お母さんに「ノートをきちんと書けるようになったことは、すごいことだと思います。


〇〇くんは、本当に頑張ってますよね。


でも、彼にとっては、ノートに板書することはとても大変なことだから、ノートに書くことに集中すると、先生の話を聞く余裕がなくなってしまうみたいですね。


そうなると、授業への理解が不十分になり、学習の定着が逆に悪くなってしまいます。


〇〇くんには、ノートに板書するよりも、先生の話をしっかり聞いてポイントだけメモしたり、教科書やプリントにキーワードだけを書いたりするほうが、ずっと学習の定着が良いと思うのですが。。。


担任の先生とまた相談してみてくださいね」と言った


私にそう言われても、お母さんを困らせてしまうだけかもしれない


直接学校の先生に伝える方が良いのかもしれない。


でも、正直なところ、これまで学校の先生の方から私に尋ねて来られた場合以外、私から学校の先生にアプローチして子供の学習に関する見解やアドバイスを伝えて、それを快く受け止めてもらえた経験がほとんどない





通常級での公平性や、これまでの経験をもとに、やんわりと断られるかさらっと流されることが多かった。







学校の先生に対する、私の伝え方、アプローチの仕方がうまくなかったからかもしれない。


でも、私にはこれ以上どうすることもできなくて


今は学校の先生に伝えるエネルギーを持てない。。。


ただ、学校の先生たちが、子供たちみんなに画一的にノートを書かせるのではなくて、ノートを書くことが学習の助けになる子もいれば、それが大きな負担となるばかりの子もいることをもっと理解してほしいなぁと思ってる


ノートを書くことが負担になる子には、負担にならない書き方をすることを許容し指導してあげて欲しいなぁと思ってる。


いろいろ考えてもやもや


この子にも申し訳ない気持ちにもなる


やっぱり、このもやもやを解消するには、先生と対決。。。じゃなくて、直接話し合うしかないのかなぁ。。。

学習障害 ⑦    〜算数障害〜

学習障害の診断は読字障害や書字障害が多いけど、時々算数障害を診断することも出てきた


ガイドラインによると、算数障害は①計算障害 ②算数的推論の障害(主に文章題の困難)③その他の算数障害(図形や量に関する問題)に分けられる。



ガイドラインに載っている課題や標準失語症検査(SLTA)の計算課題、WISC-Ⅳの下位検査「算数」やK-ABCなどを参考に診断する。


理想はそうなのだろうけど。。。


なかなかすべての検査をすることは難しく、WISC-Ⅳの結果と、診察時の簡単な計算スクリーニング(くりあがりや繰り下がりのある計算を暗算させたり、九九を問題を出したり)し、算数のテストやプリント類を見せてもらい、総合的に診断することが多いかな。


算数障害も、まだまだ私自身これからも勉強が必要な分野


親御さんにも学校の先生にもいろいろ伝えられるだけの知識がない。。


今のところ、よく伝えているのが、4年生までの四則の計算は生活に必要だから、それを身に着けるのが目標になるということ





指を使って計算することはとても大切なので、無理にやめさせる必要はないということ


九九を唱えて覚えるより、九九表を見ながら覚えた方が効率が良くないか試して欲しいということ


単位、量の基礎はなるべく実物を使って学べるようにすること


図形は一番後回しで良いこと

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などなど。。。すべて講演で聞いたり、本で読んだ受け売りです


学習障害 ⑥ ~読み書き評価の詳細 ③~

読字&書字の評価、語彙検査、視覚認知の検査、音韻検査のほかに、眼球運動や手と目の協応、手の巧緻機能など運動機能を検査することもある

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眼球運動が拙劣だと、すぐにどこを読んでいるのかわからなくなり、スムーズな音読が難しいし、手の巧緻機能が未熟だと、「書く」ことにとても時間や労力がかかるから。


どのように運動機能を検査するかは病院によって本当に様々で、心理士が読み書き評価をしてくれる病院では医師が診察で運動機能を評価をしなくてはならないかな


言語聴覚士や作業療法士が検査をしてくれる病院では、言語聴覚士が検査をする場合もあるし、作業療法士が「作業評価」としてがっつりいろいろな検査で運動機能を評価してくれる場合もある。




作業評価についても、本当にいろいろな検査があって、私はまだまだ知識不足。。。


いつも「ふむふむ」とレポートを読むだけになってしまってる


運動機能が未熟な場合、マンパワーがある場合は病院で訓練してもらうこともあるけど、難しいときは放課後等児童デイサービスの課題で取り入れてもらったり、教育センターにお任せすることもあるなぁ。




必要な子供たちすべてが訓練を受けられる環境になるといいのだけどな。


ギャラリー
  • まおの悲しみ ②
  • 表裏一体
  • ペアレントトレーニング ⑤ ~無視は難しい ③~ 
  • 心理評価の結果説明 ~我が家の場合 ④~
  • WISC-Ⅴ ② ~新しい指標について~
  • 自分じゃないとうまくいく?
  • 迷うなら支援を ~ドルジの場合~
  • ペアレントトレーニング ⑤ ~無視は難しい ②~
  • まおの悲しみ ①