不登校児ママの発達相談外来

発達障害や不登校の子供たちを診療している小児科医です。わが子も発達障害&不登校で日々格闘中。

支援について

わかってない

子供たちの小学校や中学校への入学に際し、支援学級や支援学校への入級・入学を検討する会議が今年度もあちこちの自治体(教育委員会)で行われた


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私は、だいぶ昔に一度、上司の代理で出席したことがあるだけで、最近の会議には出席したことはない。




私の仕事は、形式的な(と私は感じる)意見書をひたすら書くだけ。。。


お世話になっている病院の上司は、今年も会議に出席し、会議翌日はため息をつきながら愚痴をこぼしに来られた


「教育の先生たちって、本当にわかってない。自分たちが対応が大変になりそうな、行動化している子供でなければ、支援の必要性を感じられないというのが。。。


行動化しているかどうかとIQ値でしか子供を見ていない。


自閉症で、受け身なタイプで行動化してないけど、絶対本人が困っていきそうな子(上司が主治医をしている)、私がいくら支援校で手厚く学んだ方が良いと言っても『この子は大丈夫でしょう』と、支援級に決まって。。。


大丈夫って、何が大丈夫なんだろう!!


自分たちが、扱いやすいから大丈夫って??


本人にどんな特性があって、今後何が心配となるか、少しは考えてる?!


本当にわかってない!」と上司は会議中に叫びたかっただろう熱い思いをぶちまけた


私も、上司の気持ちがよくわかる


確かに、幼児期は多動・衝動性が強い子はわかりやすいけど、不注意があると判断するのは難しいから、ぼーっとしがちな子はそれだけでは支援の必要性が感じられないかもしれない。


対人トラブルが絶えない子なら支援の必要性を感じても、1人でおとなしく過ごしている子に特別な対応が必要とは思えないかもしれない。


でも、これだけ不登校児が増えてきているのだから、行動化している、外在化している子供たちへの対応はこのまま続けるのはもちろん、内在化している、内在化していきそうな子供たちへの洞察を、学校の先生たちにもっとしてほしい


まずは、就学時の会議で自分たちが進学先を判断した子供たちについて、その判断が長期的にみて適切だったのかどうか、少なくとも小学校高学年くらいで再度確認するなどしてほしい。


そういうことをちゃんとしている自治体ってあるのかな?

高校入試で配慮を得るために

先日、中学校の先生方と支援教育や高校入試について話し合う機会を得た





小学校で学習支援を得てきた子供たちが中学校に入学してくるようになり、その子たちに対し、中学校ではどのように対応すべきなのか、何ができるのかということを中心に話し合うことになったのだが。。。





ルビ付き(ふりがな付き)教科書や読み上げ教科書の使用はできるし、ノートのかわりにパソコン入力することも許可できる

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なんなら、試験時間の延長だってしてあげたいし、口述試験だってやってあげたい


でも、本当にそれがその子のためになるのか。


高校入試ではそういった配慮がなされないのだから、むしろ中学生の間に読字や書字の能力を鍛えるしかないのではないか。


そんな風に言われる先生は多い





一方で、他県の場合では、高校入試で配慮を得ようとすると、中学校で受けてきた支援・配慮の実績でもって配慮が実現する(可能性がある)とも聞く。


そして、教育行政?に詳しい先生が言われるには、県の高校入試に関わる部署と支援教育に関わる部署の人材は人的交流が少なく、高校入試と支援教育が切り離されたままなのだと。。。


今後、中学校で得られる支援がどこまで高校入試で反映が可能なのか、前例がなく誰にも全くわからないようだ


私自身知っているのは、知り合いの児童精神科ドクターから数年前に聞いた、(進学校ではない)県立高校で、入試の際に試験時間延長が認められたケースたった1例


だから、中学校の先生たちが及び腰になる気持ちはわかる。


でも。。。きれいごとなのかもしれないけど。。。


前例が無いことは、誰かが切り開いていくしかない


それに、支援や配慮を得ながらの学習で、しっかり学ぶことができるのなら、入試云々に関わらずその子自身のためになるのではないか


そもそも中学校の先生たち自身が高校入試を中学校の勉強の目的のようにとらえすぎているような気がする


私は、医療者の立場でそんなことしか言えなかった。。。


中学校での学習支援は小学校に引き続き行ってもらい、その成果でもって現場の先生方から声をあげてもらい、入試への配慮をお願いしていく


私を含めて、医師たちは診断書でも申請書でも必要な書類は何でも書きます!と約束


少しは前進したのかな。。。?

それは虐待?それともしつけの範疇? ①

医療者に関わらず、誰もが、児童虐待を疑った場合、児童相談所や市町村に通告する義務があるわけだけど。。





私自身、これまで児童相談所に相談や通告したことは何度もあるし、児童相談所や自治体からの相談や照会、診察依頼を何度も受けてきた

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特にここ数年、児童相談所からの照会の頻度は増えてきた実感がある。




多くの場合で、発達相談外来に通っている子供の親御さんの対応が、虐待じゃないかと近隣あるいは学校から児童相談所へ通告されたというもの


私は、子供自身の特性や親子関係、受診状況などを含めた見立てを話すことになり、この場合は守秘義務違反とはならない。





私が知り得ることをすべて伝え、児童相談所のスタッフからも情報をもらった上で、その後は一緒に親子に関わっていくことになる。


テレビなどのニュースで報道される児童虐待は、耳をふさぎたくなるほど悲惨なケースだけど。。。


私が関わる児童虐待疑いのケースでは、ほとんどの場合で虐待とまでは断定できず、かといってしつけとも言えず、いわゆる「マルトリートメント」と表現するのが一番しっくりくる。





マルトリートメントは、「不適切な養育」「避けるべき子育て」などと言い換えられることが多いかな


そして、子供の心や発達を扱う小児医療は、「マルトリートメント」が起きないように、親御さんを支援することが、大きな仕事の一つなのだと思う


実際に、私の発達相談外来も、私が子供本人と話す、関わる時間よりも親御さんと話している時間の方が圧倒的に長くなる


親御さんの、元々は子供を思っての言動が、マルトリートメントや虐待になってしまわないように、少しでも力になれたらいいなぁと思ってる


何もしてくれない ②

発達相談外来で、親御さんから「学校は、何もしてくれない」という言葉を聞くとき。。。




発達障害の場合


必要と思われる手立てや支援をしてもらえない場合、あるいは、具体的な支援方法を先生が知らない場合に親御さんから学校への不満を話される。


私が診療で関わる地域では、小学校の段階では以前に比べて支援教育が充実してきたと感じている













親御さんや子供たち自身から「支援級楽しい」とか「支援を受けてよかった」「小学校を卒業するまで支援を受けたい」「何とか通級が受けられるとよいのだけど」など、学校から得られる支援をポジティブに捉えておられる親子は多い




熱心に児童の受診についてこられたり、訓練の様子を時間を調整して病院に見に来られる先生もおられる


そうして支援教育は充実していく一方、通常級の状況は残念ながらそれほど大きくはかわらない


親御さんが宿題の質や量の相談をしても、とりあってくれなかったり


ワープロ機能や電子辞書の使用を求めても認められなかったり

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制服や服装に関する配慮が得られなかったり   などなど。。。










さらに、中学校では、支援級はその子に合った勉強をするというより、ただただ少人数で勉強するだけの意味しかない場合も多い


小学校では、支援教育について学び、経験のある先生たちが増えてきたと感じるけど、中学校ではむしろ通常級で進路指導など力が不十分な先生が支援級に配置されたのだろうと考えざるを得ないケースもある


もちろん、そういう場合ばかりじゃないけど、全体としてそう感じることが多いということ。


それから、学習障害の子供に対する支援では、かなり医師が主導的にならないと事態動かないケースもあると聞いた。



どの程度から配慮や支援を求められるのか、これからもずっとテーマでありつづけるのだろうな。。。




合理的配慮について

発達相談をしている中で、子供の発達特性に応じて、個別の配慮が必要だと実感しているが。。。


先日、ちょっと考えさせられるケースがあった


小学校高学年の男児、幼児期は発達の凸凹が大きく、療育や作業療法を受けていた。


そして、小学校への適応は良く、しばらく受診が途絶えていた


久しぶりに受診してきたので、お母さんに事情を聞くと。。。。


学校で支援や配慮をもらえた方が良いのじゃないかと考えるようになったからのようだ。


そう考えるようになったいくつかのエピソードを話してくれたのだが、いずれも「う~ん。。。それは配慮をもらうべきとは言えないレベルだなぁ」と感じることが多かった


例えば、不器用でコンパスをうまく使えず、円を描いたときに最後にちょっとずれてしまうから、中学校に行ったらテストの点数が減点されるのが心配、とか

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国語の課題で擬人化した言葉を入れた俳句がうまく作れず、先生からなかなか合格をもらえなかった、とか


お母さんとしては、幼児期に「言語発達遅滞」や「発達性協調運動障害」という診断名がついていたから、それを学校に告げたら、苦手なことは配慮してもらえるのではないかと考えられたようだ







でも、本人に学校生活や勉強についてどう思うか聞いたところ、苦手分野はてこずることがあるけど、何とかなっていると言う


そう話す本人はとても明るく、自信を持っている印象を受けた


学校の先生からのお手紙でも、学校生活には十分適応的だし、学習は全体的に平均をやや下回る程度で問題なしとのこと。


私は、彼には合理的配慮は必要なし、と考えた


お母さんに学校に配慮をお願いできないことを伝えた時、「そうですか。。。」と、少し残念に感じておられたように見えた。


私は、家では本人が助けを求めたら手伝ってあげてほしいこと、自分で苦手なことをやったなら、不十分でもしっかり認めてあげてほしいことなど話した





合理的配慮が得られることが知られるようになってきて、この子のように配慮をお願いするべきかどうか迷うケースは増えていくのかもしれないなぁ。


もしかしたら、将来、この子のような程度の場合でも、配慮や支援を得るべきという考え方になっていくのかもしれない。


でも、資本主義である以上、資本主義が社会や技術が発達するためのベターな選択肢である以上、どこかで線を引いて競争するしかない面もある。







子供が不適応を起こす前に配慮をしてもらえることを願っていはいるけれど。。。




合理的配慮の判断、線引きはあいまいで難しい。。。

ギャラリー
  • まおの悲しみ ②
  • 表裏一体
  • ペアレントトレーニング ⑤ ~無視は難しい ③~ 
  • 心理評価の結果説明 ~我が家の場合 ④~
  • WISC-Ⅴ ② ~新しい指標について~
  • 自分じゃないとうまくいく?
  • 迷うなら支援を ~ドルジの場合~
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  • まおの悲しみ ①