不登校児ママの発達相談外来

発達障害や不登校の子供たちを診療している小児科医です。わが子も発達障害&不登校で日々格闘中。

不登校

病は気から

不登校の原因(の一つ)として、よくクローズアップされる起立性調節障害


最近は、ASDなど発達障害と診断する以上に、起立性調節障害と診断する難しさ。。。というか葛藤?をますます感じるようになった。


というのは、起立性調節障害と診断がつくことで、正しい「隠れ蓑」になり、子供が回復していく、適応していくためのまもりとして作用する半面、周囲の、子供の特性への気付きや理解への障壁としても作用する、副作用の面を感じることもあるから








起立性調節障害:ODという診断は受け入れやすいけど、発達障害の診断は受け入れがたい。


HSCと言われたら受け入れられるけど、ASDは受け入れがたいのと似ているなぁと思う





だから、朝起きられない不登校児の親御さんから起立性調節障害じゃないか?と問われることが多いけど。。。


「症状としては起立性調節障害にあてはまるけど、不登校の主原因は特性ゆえの生き辛さ、ストレスだと思います」


「起立性調節障害だから不登校になったのではなくて、不登校だから起立性調節障害になったと考えた方が良いです」


と答えている。。。


複雑そうな表情をされる親御さんが多いけど。。。


起立性調節障害に、身体症状にフォーカスを合わせるのじゃなくて、子供の特性を、不登校になった心理的要因をちゃんとみてほしい

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もちろん、少数の、「本当の」起立性調節障害の子もいる(心理的要因はあまりなく、純粋に身体の病気だと診断できる場合)し、不登校からの回復過程では今度はOD症状に足を引っ張られてしまう子もいる


そういう場合は、私も全力で身体症状の治療をする


起立性調節障害は、「病は気から」がぴったり当てはまる病気だと思う。





「病」ばかりじゃなく、「気」をちゃんとみてほしい

働きたくないから

高校生の不登校(傾向)ASD男子の親御さんと話していて。。。


親御さんと子供で進路の話になったとき、その子は「大学に行きたい」とはっきり言ったそうだ

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親御さんは、子供が迷いなく、はっきりそう言うから、やりたいこと、学びたいことができたのかと嬉しくなった。


それならば、大学進学を目標に、高校にも頑張って通えるはず!と思ったそうだ。


でも、話し合っていくうち、その子は「だって、まだ働きたくないから。働きたくないから、大学に行くよ」と言うから、がっかりしたのだと


行きたい学部や大学があるわけでもなく、学びたいことが決まったわけではなく。。


働きたくないから大学に行く


それで本当に良いのかと、私に問われる。


確かに、やりたいことが明確にして自分で自分の進路を選んでいくのが理想だとは思う


でも、ASD特性が強めだと時にそれがすごく難しい





自分の将来がなかなか想像できない。


自分自身、何をしたいのか、どうなりたいのかよくわからない。
(逆に、絶対にこれをしたい!となる子もいるけど。。。両極端な感じ?)


だから、進路を決めていくとき、常に「これは無理だから、こっち」みたいな消去法になっていってしまう。
(私も、高校で理系か文系を選ぶときは嫌な先生を避けるために理系にしたなぁ。。。)








この子も、就職か進学かとなったときに、就職は無理、だから進学を選んだ


消去法ではあるけれど、ちゃんと自分で選べた


どの学部にするのかも、消去法で選べばいい


経済的な事情など、家庭の許容範囲は制限を設けるしかないけど、その範囲内のことならば、こうしてこれからも消去法で選べたら良いなぁ


選び続けることができれば、自分なりに満足感を持って、生きていくことができる





だから、親御さんは、子供がちゃんと自分で選べたことを喜んであげてほしいな


低学年の登校渋り&不登校

不登校児への初期対応について


子供たちが「学校へ行きたくない」「学校へ行けない」と言ったとき


身体の不調を訴えて、学校へ行けなくなったとき


どんなに起こそうとしても、布団から出てこなくなったとき


子供たちにとっては、さんざん頑張った後の、たどり着いたゴール





だから、基本的にはこれ以上頑張ることは難しいから、まずは休息が必要と思う





でも、親御さんにとっては、子供が学校へ行けなくなったという新たなステージの始まり。


子供を叱咤激励し、なんとか学校へ行かせようとする&学校へ行けなくなった理由探しを始める。





親御さんが子供を叱咤激励して登校させようとする時間は、なるべく早く終わると良いと思うけど、理由探し&できうる対策をとっていくことは、その後ずっと必要だと思う


前置きが長くなったけど。。。


実は、上記の考えは、小学校中学年以後の不登校の場合


私は、保育園~小学校低学年までの子供たちの場合のみ、ある程度は子供を励まし、時には親御さんが付き添い登校するなどして、登校しづらくなった理由を探しつつ、登校し続ける努力を比較的長くしてみて良いと思う


いろいろ理由があるけど、まず一番は、子供自身の経験不足ゆえという面もあるから


だから、子供にとって「まもり」がそれまでよりもしっかりされたなら、経験を積むことで、学校への不安が解消していくこともある。

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それから、学校へ行けなくなる理由が、他の年代に比べて比較的早くわかってあげられることが多いから。


ただ、その場合は特性や学習上の困難は大きいという可能性もあるけど。。。


だから、「まもり」をしっかりしてあげることで、再び学校へ向かえるようになる子もいる反面、この先ずっと適応に苦労していくことになるという両極端な印象もある


なんにせよ、無理矢理引っ張っていくのではなくて、子供の気持ちを聞きながら、最大限まもってあげながら、いざというとき背中を押すイメージ?


抽象的に言うのは簡単だけど、実際にどうするのが正解なのか、本当に難しいよね。。。


アドラー心理学 ⑥ ~問題行動の目的 ④~

子供たちの問題行動の目的、最終段階である、第五段階は「無能の証明」


どのような手段を用いても、「自分の居場所」が見いだせなかった子供たちは、人生に絶望し、自分のことが心底嫌いになり、自分には何もできないと信じ込むようになる。。


そして、これ以上の絶望を経験しないために、あらゆる課題から逃げ回るようになる。。。


「できるかもしれない」と課題に取り組んで失敗するくらいなら、最初から「できないはずがない」とあきらめた方が楽なのだと。


この段階に入った子供たちは、なんらかの精神疾患を疑われることもあるそうだ


ちなみに、「僕は馬鹿だから」などと口にすることができるくらいの状態は、自嘲しているだけと考えてよいよう


そういうことを口にもせず、周囲からの関り、与えられる課題を一切拒否する状態が第五段階といえる。


本には、この段階に入ったら専門家に頼るしかないということ、そして専門家にとっても、無能の証明をはじめた子供たちを援助するのはかなり困難な道だと書いてある


私自身の考えでは、不登校の状態6にいる子供たち(の一部)が第五段階に入ってくるのかな、と思う。





援助したいけれど、病院にも来られない状態の子も多い。。。

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いかに、最悪期を、より軽い状態で留めるかが重要だと実感するなぁ。。






アドラー心理学 ⑥ ~問題行動の目的 ③~

子供たちの問題行動の目的について








第三段階は「権力争い」


この段階に至ると、子供たちは強く「反抗」するか、「不従順」を貫く。


そうして、自らの力を誇示して、特権的な地位を得ようとする


ここでも子供は、何とか自分の地位を作ろうと、守ろうとするゆえの行動。。。


そして、第四段階は「復讐」


称賛の要求、注目喚起、そして権力争いは、「もっとわたしを尊重してほしい」という愛を乞う気持ちの表れ。。。


それがかなわないと知った時、人は一転して「憎しみ」を求めるようになる。。。


憎悪という感情のなかで、わたしに注目してくれ、と考えるようになる。。。


復讐の段階、具体的にはストーカー行為や自傷行為、引きこもりも「復讐」の一環だそうだ


自らの価値を傷つけ、自らの価値を毀損していくことで「こんな自分になってしまったのは、お前のせいだ」と訴える。


憎悪や嫌悪によってなおつながろうとする。。。


この本を読んでいて、私が一番苦しくなったところ


あらためて、不登校と引きこもりがよく同じ土俵で語られているけど、やはり、だいぶ違うのじゃないかと思った

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不登校は、子供自身が、自分のために、自分を守るためになるもの


でも、引きこもりは不登校になってしまった子供が、十分に受け止めてもらえなかったことなどに対する「復讐」の意味合いを帯びてくる。。。。








不登校の段階で、いかに子供自身を受け止めようと努力することが大切だと思い知らされた

ギャラリー
  • まおの悲しみ ②
  • 表裏一体
  • ペアレントトレーニング ⑤ ~無視は難しい ③~ 
  • 心理評価の結果説明 ~我が家の場合 ④~
  • WISC-Ⅴ ② ~新しい指標について~
  • 自分じゃないとうまくいく?
  • 迷うなら支援を ~ドルジの場合~
  • ペアレントトレーニング ⑤ ~無視は難しい ②~
  • まおの悲しみ ①